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皆さんこんにちは。加藤嘉一です。

北朝鮮を巡る情勢が緊迫化しています。
2月12日、北朝鮮政府は第三次核実験が「成功」した旨を発表しました。
米、日、韓は当然強い懸念を示し、
国際的な枠組みの中で制裁措置を加えるべく連携を進めていきます。

焦点となるのは北朝鮮の同盟国である中国の動きであることは
疑いありません。「朝鮮半島の非核化」を外交目標に据える
中国政府も同国の核実験に対して「断固反対」と強い意志を表明しました。
僕がこれまで付き合ってきた中国国内の研究者や政策関係者も、
「中国政府はかつてないほど北朝鮮に対して圧力をかけていくだろう」と見ています。

僕は来月国家主席に就任する習近平総書記の北朝鮮政策には変化が生じると考えています。
これまでも「先軍政治」と「主体思想」を掲げる金王朝は裏で支えつつも、改革開放を促し、
核兵器開発には反対するというダブルスタンダードで何とか切り抜けてきましたが、
新政権では前者は堅持しつつも、後者に重心を置いた政策に転換してくるでしょう。
対米関係や国際社会における責任と利益を考慮したうえでの戦略的政策転換が焦点となります。

ちょうど1年前に出した拙書『北朝鮮スーパーエリートから日本人への伝言』(講談社+@新書)の
終章「習近平の北朝鮮政策」(保護から圧力に転換する習近平)にて、
習近平氏に北朝鮮政策を提言するブレーン2人のコメントを引用したので、ここで皆さんに紹介します。
いずれも、国際社会という枠組みにおける中国と北朝鮮の新しい関係を知る上で示唆に富む発言です。

「中朝両国がこれまでのような血の同盟で結ばれた関係を維持することは現実的ではない。
 どこかで転換しなければならない。次期リーダーが転換への意識を持っておられることは幸いだ。
 急転換は難しいとしても、具体的な政策や主張で、
 北朝鮮にも中国のスタンスを徐々に分からせないといけない。
 これからは無条件に保護しませんよ。
 ましてや核実験や対韓国への武力攻撃などを実施した場合はもってのほかですよ。
 米国、韓国、日本と一緒に、制裁措置をとりますよ。
 そういうメッセージを実際の行動で、独自の外交ルートで伝えていくんです。」

「要は普通の国家関係を構築しようということですよ。
 胡錦濤から習近平へとバトンタッチがされ、
 北朝鮮政治もそれなりに動くであろう2012年がチャンスであり、ターニングポイントだ。
 一気にというわけにはいかないだろうが、
 新しい政権としての基本的戦略とボトムラインは用意しておかなければならない。」

また、具体的政策として、ブレーン2人は3つのポイントを指摘しています。

① 北朝鮮の改革開放は絶対であること。さもなければ相手にしない。

② 核実験や武力行使はもってのほかであること。
  仮に行った場合は公然と非難し、状況次第では制裁を加える。

③ 六カ国協議など地域協力の場面で、米国、韓国、日本とより一層歩調を合わせる。
  一緒になって北朝鮮に圧力をかけることは辞さない。

以上です。
皆さん、引き続き激動の北東アジア情勢を注意深くウォッチしていきましょう。

加藤嘉一
2013年2月12日 米ニューヨーク市内の一角にて