みなさんこんにちは、加藤嘉一です。
このたび、台湾にて『愛国奴』という本を出版する運びとなりました。
『売国奴』という名前を聞いたことがある方、多いと思います。
まさに、お国を売るべくして売っている人たちを指します。
非常に悪質な集団だといえるでしょう。
しかし、『売国奴』が国民国家における多数を占めることは基本的にはありえません。
そこまで肝っ玉のすわった人は歴史的にもそう多くは出現しません。
本当に警戒すべきは『売国奴』ではなく『愛国奴』です。
『愛国奴』とは、自分ではお国を愛しているからこそ行っている行為だと勝手に勘違いし、
結果的にお国を売っているひとたちのことを指します。
本書において、僕は2005年、2010年に中国全土で勃発した反日デモの際に「愛国無罪」
というスローガンを掲げ、日貨ボイコットを煽る人たちを「愛国奴」の具体例として挙げました。
グローバル時代において、「愛国無罪」などという前近代的なスローガンを掲げ、
他国の主権が及ぶ大使館に暴力行為を課す人々は愛国奴にほかなりません。
これだけ相互依存関係が進行する時代、ひとつの製品をめぐって、日中双方の利益は
複雑に絡み合っている、切っても切れない関係にあるんです。
現在中国には2万社以上の日本企業が進出し、1000万人以上の中国人を雇用している。
日本製品が中国市場から消えた場合、この1000万人は難民と化します。
それでは、愛国無罪を掲げる人たちは結果的に愛国者なのか、売国者なのか。
答えは明らかです。
6月13日から1週間ほど台湾を訪問して、台湾各界の有識者、読者たちと共に、
「愛国奴」の問題を徹底議論してきます。
台湾という政治的にセンシティブな場所に、愛国奴は必ず存在すると僕は確信しています。
自分の目で確かめてきます。
将来的に、この本が中国本土や日本でも出版できることを祈っています。
両国における愛国奴の人口は、かつて無いほど、みなさんが気づかない間に、
水面下で蔓延していると確信しているからです。
知らぬ間にお国を売っていく人たち。
それが愛国奴です。
2011年6月11日 山東省青島空港の喫茶店にて