地球の片隅にて

February 7th,2012
News

皆さんこんにちは。加藤嘉一です。
いま一息ついて書いています。

東欧が歴史的豪雪に見舞われ、トルコ、ギリシャ、イタリアを廻る視察旅行も様々なトラブルに遭遇しました。
特にイスタンブールからアテネは遠かったですね。
アタテュルク空港でフライトがキャンセルになり、チケットを破棄することを覚悟し、
吹雪の中1時間かけて向った電車の駅では「ギリシャ経済が原因で、アテネ行の列車は走ってないよ」と言われる始末。
最後通告のようでした。
でも諦めずに、最後の望みを託してバスの駅に向かったら何とか夜行列車の切符が手に入りました。
でもアテネまでは行けず、ギリシャ北部のテッサロニキまでのみ。
トルコから国境を越えてギリシャに入ったあたりで、
今度は路面が凍って危ないということで、バスが走らなくなってしまった。
結局予定より5時間くらい遅れてテッサロニキに着き、その日のうちにアテネ入りしました。

アテネで2日間じっくり市民たちの経済生活を感じ、
古代ギリシャの政治哲学を追いかけることができました。
アテネ市民はのんきでしたね。
とてもデフォルト寸前の国家とは思えませんでした。
「国民国家」の在り方を考えさせられる局面に多く出くわしました。

僕が政治に興味を持つきっかけを作ってくれたアリストテレスが夢の中に出てきたときには、感動で涙が出てきました。
古代遺跡アゴラを歩きながら、
「ギリシャの思想家たちは、何を考え、どんな情報をもとに、何のために議論していたのだろう、
おそらくは生活のために、必要な問題ー市民の安全と繁栄確保ーを解決するために、
自由で忌憚のない議論をしていたんだろうなと」、脳裏の中で、勝手に想像の理想国を作っていました。

民主主義は時の流れのなかで進化してきたのだろうか。
産業革命やIT革命を経て、
昔のどの時代よりも便利な生活を享受している僕たちが古代ギリシャの市民たちよりも豊かで、
持続可能な思想を創造できていないとしたら、それは人類の劣化を意味するのだろうか。
豊かな思想というのは貧しさのなかでこそ育つのかもしれない。貧しい家庭が逸材を生むように。

古代ギリシャの思想を追いかける旅路で唯一分かったことが二つある。
ひとつに、歴史に名を残す思想というのは孤独と飢餓のなかでしか生まれないということ。
ふたつに、歴史の発展と人類の進化は逆説的な関係にあり、往々にして、皮肉を創出することである。

アテネからローマに飛びましたが、歴史的豪雪のローマの交通ダイアルは乱れていました。
予想以上に寒かった、治安は想像より良かった。
ギリシャ同様、イタリア経済が相当悪いことは商店街の人たちとの会話で分かりましたが、
人々はリラックスして、国家のことなんか無関心という表情。
それにしてもローマの建物や風景は感動的でした。
歴史とセンスを感じさせる街並みに見とれていました。

世界史で学んだ、世界で一番小さい国、バチカン市国を目にしたときは感動しました。
国家の中に入ろうとしたら「中で働いているか、住んでいる人しか入れない」と断られました。
「市民の安全を確保するため」というのが理由でした。
世界には200以上の異なる国家がありますが、それぞれが独自のプリンシプルを以って運営をしている。
いい悪いの問題ではない。
自らにとっての豊かさと、国際社会への貢献欲が自らの立ち位置を決めるんだと、
サンピエトロ大聖堂を前に思いを巡らしました。

旅はいいものです。
男は仕事で磨かれる、そして、旅で成長する。
日本の若い人たちにももっと外に出てほしい。
自分探しは内向きの前提では達成されない。
非日常的な時空に接することで、自分と他者との関係を再構築することで、そこから「発見」が見えてくる。
自分って誰なんだろう?という根本的な問題を考えるようになる。
自分と社会、いまと歴史、未来と過去。
忙しさや怠惰のなかで、日頃は意識できない異なる点を、一本の糸へと綴っていく作業、それが旅というもの。
歴史的円高が続いているうちに、外に出よう。
いまがチャンスなんです。
「いま」に命がけになれない人間に、明日という時間は決しておとずれない。
最低限、それが事実。

最後に、わがままで、癖のある自分に付き合ってくれて、共に「気合旅行」を強行してくれた旅の相棒に感謝したい。
トランジットの空港の喫茶店で急に腕立てを始めたり、
バスの中で腹筋したりする自分の横にいることはさぞ恥ずかしかったことと思う。
恥ずかしがるどころか、一緒にトレーニングに付き合ってくれた。
疲れ果てながら夜中にチェックインしながら、翌朝積雪のなかランニングに行く僕を追いかけてきてくれた。
引っ張ってくれることもあった。

彼がいなかったら僕は何もできなった。
様々なトラブルを解決するために、ともに考え、悩み、リスクを取って行動に移した。
最後の最後まで決して気は抜かなかった。
少なくとも、妥協はしなかった。
人間は一人では何もできない。
支えられて、励まされて、一緒に汗をかいて、気合いれて、突っ走って、ぶっ放して。。。

You surely are A man!Cheers!