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皆さん、こんにちは。加藤嘉一です。

このたび、拙書『脱・中国論ー日本人が中国と上手く付き合うための56のテーゼ』(日経BP社)を出版する運びとなりました。
僕が2011年1月から2012年3月まで日経ビジネスオンラインで連載させていただいた『脱・中国論ー現代中国を読み解く56のテーゼ』を大幅に修正・加筆したものです。

本書のタイトルを『脱・中国論』と設定したのには理由がある。
中国は広く、いろんな人がいる。
私たちは普段、なんとなく「中国人」という言葉を口にし、メディアも盛んに「中国」を報じている。
それは、多くの場合、ステレオタイプな「中国」もしくは「中国人」を前提にしようとしている。
実際には、沿岸部と内陸部、都市部と農村部の違い、地域による性格や価値観、テーブルマナーや人間関係、共産党との距離感などの違いがあるにもかかわらず、である。
中国を理解するには、まずはこの「中国」もしくは「中国人」という凝り固まった枠をなくさなければならない。
複雑極まりないパズルのボードに、一つ一つのピースを丹念に埋めていくように。
丁寧に、粘り強く、強かに、「中国」を理解し、「中国人」と付き合っていく必要がある。
それが、『脱・中国論』という言葉に込めた思いだ。
(「まえがき」より)

日本で5冊目となる単著ですが、『脱・中国論』は、僕が9年間現場で闘ってきた集大成といえる作品だと思っています。
僕がこれまで中国・中国人と付き合ってきて、一番日本の皆さんに伝えたかったことがこの本の中に詰まっています。
何も持たなかった、誰にも知られていなかった、海の者とも山の者とも知れない僕のような人間を、包容力を持って受け入れてくれた中国、そしてそこに暮らす人々に感謝の気持ちを送りたいです。
果てしなく繰り返された会話のパズルが、今脳裏を横切っています。

真実はいつも現場にある。

この思いを胸に、僕はこれからも「現場」に足を運び続ける。
5年後、10年後にはまた違った対中観が生まれているかもしれない。

それはそれでいい。
『脱・中国論』は発展途上で、未熟な僕の、現段階での集大成。
人生、変わらないことは、変わり続けるということだけだ。

それでも、僕は自分の心の中にある、いつまでも変わらない何かを大切にしたい。
それを追い求めて、これからも走り続けたい。

僕には走り続けることしかできない。

どれだけ自分のことが嫌いでたまらなくても、自分と向き合うこと、闘うことにだけは汗を流していこう。

自分は何者かを再認識させてくれるところ、それが僕にとっての世界。

心の軸足はいつだって日本にある。

2012年6月25日 北京の書斎にて