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20150316

皆さんこんにちは。加藤嘉一です。

3月14日(土)、日の出前の7時半スタート。
ワシントンロックンロールマラソン走ってきました。

結果は3時間18分49秒。

以下、僕が心の内に感じたこと、思ったこと、考えたことを率直に描写します。

天候はあいにくの雨風。予報では14日の前後は天気が良くて、14日も午前中以外は曇りとのことだった。なぜか僕たちが走っているときだけ雨が降っていた。周りのワシントニアンたちも苦笑いで不満をもらしていた。運営サイドは大変だったと思う。僕にとっては初めての雨のなかでのマラソン。天候に関してはアンコントローラブルだからしょうがない。気持ちはブルーだったが、静かに切り替えた。

ロックンロールマラソンというだけあって、コースはこれまで走ったなかで一番きつかった。緩やかだったり、傾斜がきつかったり、とにかくアップダウンが続いた。中学の時出場した八ヶ岳ロードレースや高校時代の練習拠点のひとつだった昇仙峡、中高の強歩大会で走った愛宕山を思い出しながら走っていた。

僕自身、アップダウンは得意じゃないけど、嫌いじゃない。むしろ、平坦な道よりもアップダウンがあったほうがいい。

アップダウンよりも気になったのはやはり雨風と、それによる体温の低下。伊豆出身の僕は寒いのが大の苦手(山梨は寒かったけど)。暑いのはまったく気にならないが、寒いと両手が凍えてしまう。周りのランナーも震えながら走っていた。でもコンディションはみんな一緒。自分だけが辛いわけではない。

26.2マイル(42.195キロ)を走り終わって最初に思ったこと。それは、「初めてなんとか納得できるマラソンができた」ということ。今回を含めて6回マラソンを走ったけど、実質初の「完走」だった。

3年前に走った東京のタイムは3時間18分20秒で今回とほぼ同じだった。でも、東京はレースになっていなかった。

①途中(ハーフ前)で気持ちが切れた
②何回も歩いた
③考えて走らなかった。

今回は違った。

気持ちは一回も切らさなかった。寒くて辛くても、耐えた。「お前20年も走ってきたんだろ。何のためにやってきたんだ。家族や母校が恥ずかしい思いをするような走りだけはするな。親父が見てたらぶん殴られるぞ」と自分に言い聞かせながら、最初から最後まで集中して走れた。一回も歩かなかったし、タレなかった。

頭も使った。前回の那覇マラソンでは、給水の水が手袋の上からもろにかかって手が冷え、低体温症になった。今回は細心の注意を払ってコップを両手で抱えながら、水を少量だけ口に含むようにした。水たまりを避けながら、最短コースを走るよう心がけた。走り終わって、真っ先に疲労を感じたのが大脳だったというファクトは意外な収穫だった。

スタートして3キロくらいで3時間10分で走るペースメーカーに追いついた。いつもは1人で走っているから、集団走は楽しかったし、楽に感じた。

5キロくらいで、給水の際に自然と前に出てしまった。僕は躊躇した。一旦ペースを落として集団につくべきか、そのままのペースで思い切って前を追うべきか。

10秒くらい考えて、僕は前を追おうと心に決めた。ここ数年、マラソンだけでなく、仕事や生活においても消極的になり、萎縮していた自分を眺めるのは辛いことだった。無謀に思えても大胆に突っ込むのが両親から教わった僕本来のスタイルのはずだし、人生を通じて堅持しなければ生まれてきた意味がない。

「いつも前だけを見てアグレッシブに」

高校時代のハチマキに綴った言葉が脳裏をよぎった。

「後で潰れてもいいから、自分らしく前を向こう」

結果的に、30キロ地点くらいで、3時間10分で行くペースメーカーが引っ張る集団に捕まった。僕はついていけなかった。あのとき、5キロ地点で集団の中で我慢をしていれば、もしかしたら、最後までつけたかもしれない。でも、僕はまったく後悔していない。むしろ思いっきり負けて清々しい想いを抱いている。あのとき思い切って前を追った自分を、少しだけ褒めてあげたい。

タイムは東京より遅かったけど、内容は明らかに今回のほうが勝っていた。そして、走っている間、東京のときも、そして今も変わらずに僕を叱咤激励してくれる人たちの表情が何度も、何度も頭に浮かんだ。走りながら、たくさん泣いた。赤ん坊のようにみんなに甘える自分。そんな僕に対して優しく、厳しくしてくれる人々への感謝の気持ちをこめて走れたことに安堵を覚えた。少しだけ、照れくさくもあった。

決して自慢できるタイムではない。僕は足が遅いアマチュアのランナーだ。

いまも「気持ちは現役」で市民ランナーとして走っている山梨学院付属高校駅伝部の先輩・同級生・後輩のなかでは、僕は一番遅いだろう。少しでも追いつけるようにもっと努力したい。だからこそ、今回は笑顔でゴールしたかった。両手を広げて、胸を張ってゴールラインを踏みたかった。その願いは叶った。初めてマラソンを楽しいと思えた。また走りたいと思えた。

実力・才能・センスの欠如は百も承知のうえで、僕は、また明日から走り出したい。そして、走ることを通じて、人生の中のもっと深い場所で、いつか、成長した自分と再会できることを楽しみにしている。

2015年3月14日 ワシントンDCの自宅にて