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皆さんこんにちは。加藤嘉一です。
本日はご報告があり、一筆取らせていただきます。
8月22日(木)、エズラ・ヴォーゲルハーバード大学名誉教授との共著『リバランス:米中衝突に日本はどう対するか?』(ダイヤモンド社)を出版する運びとなりました。
約1年前、ヴォーゲル先生のご自宅に3泊4日で合宿をする形で、連日インタビューを重ね、その後の追加取材を経て出来上がったのがこの本です。本書にも出てくる「ヴォーゲル塾」に参加されたことのある方は覚えておられると察しますが、まさに先生ご自宅一階の「あの部屋」で行いました。
私自身、2012年から2014年までハーバード大学にいましたが、その前後、期間を含め、先生には何から何までお世話になりました。その後米国を離れましたが、日本と中国を含め、半世紀以上に渡って東アジア研究に尽力され、日本語と中国語を同時に操り(少なくとも私自身は先生以上に、日本語と中国語を、言語の背後にある文化や国民性などを深く理解した上で操る米国人を知りません。そして、本来言語学者でも、日本と中国の専門家でもなかった先生が、両国の言語を学び、高めていくために、血のにじむような努力をされてきたことを身を持って感じてきました)、日本や中国へ赴き、現地の言葉で現地の人々と交流し、その過程を研究の素材とし、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』、『鄧小平』といったベストセラーを連発してきた先生の仕事、それに付随してきた数々の物語を書籍として残したい。私たち人生の後輩が今後より健全に日米中関係や東アジアに向き合っていく上での生きた教科書にしたい。先生への感謝と敬意の気持ちを込めて、少なくとも私自身にできる全力投球、全力疾走で本書の作成に挑みました。
参考までに、本書(全304頁)の構成・目次は以下となっております(https://www.diamond.co.jp/book/9784478108628.html
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目次

はじめに

第1章 「急成長」中国の今昔

習近平がこれほど社会を緊張させるとは
習近平は「改革派」か
鄧小平との比較:習近平をどう評価するか
反腐敗闘争の成果と乱への恐れ
秩序なき混乱に生じる活力と、秩序化された社会の静寂
中国で最大の問題は「経済」と「自由」
中国の政治体制は民主化に進むか
習近平が懸念する「ゴルバチョフ現象」
戦略なのか、スローガンなのか
「中国の夢」と「韜光養晦」は背反するか
習近平は「六四」を正視し、総括するか

第2章 「良い人」日本の今昔

平成をどう総括し、令和にどう挑むか
世界から見れば異質な日本人の話し方
生活水準が向上した一方、教育への熱意は低下?
日本の発展のため平和憲法は維持すべきだ
日米同盟は盤石か?
日本のこれからのため「大人物」の育成を
米国不在の今こそ、日本は自立するチャンスだ
安全保障分野でも知的貢献はできる

第3章 「覇権国」米国の役割

米国民は自信を失い、祖国に失望している
米国企業は『ジャパン・アズ・ナンバーワン』から何を学んだか
「愛国」とは何だろうか
自由の氾濫と、はびこる「軍国主義」
ハーバードが恐れるのは北京大よりスタンフォード

第4章 日中関係のゆくえ

1000年余りの日中関係史を振り返って今
尖閣諸島「国有化」事件の爪痕
日中にヒビを入れる?米国陰謀論の実際
日中和解のために学者に何ができるか
日本は歴史を学び直すべきだ
中国人も、日本をもっと知るべきだ
中国企業が日本企業から学ぶべきこと
中国の「新中産階級」

第5章 米中関係のゆくえ

ニクソン大統領へ二度送った提言書
米中が国交を正常化することの歴史的必然性
米中間で最大の問題は何か
中国は米国に代わって「世界の警察官」になれるのか
米国との貿易戦争に挑む中国は80年代の日本企業から何を学ぶべきか
米中は台湾問題をめぐって一戦を交えるのか
米国が台湾に別れを告げる時か
北朝鮮はなぜ国を開かないのか
米国と中国は互いにわかり合えるのか
米中ともに「相手を変えることはできない」
プロパガンダと太子党

第6章 国を率いるリーダーたち ── 官僚と政治家

官僚と政治家の特質
初の訪中と周恩来の印象
鄧小平を知るカギは「家庭」だった

いま『胡耀邦』を書く理由
ワシントンで役人として過ごした2年間
ヘンリー・キッシンジャーとの縁
江沢民のハーバード講演
印象深かった各国の政治家・指導者
日本は将来を担うリーダーをどのように育成すべきか

おわりに

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私は聞き手として、「はじめに」「おわりに」、先生への質問以外に、僭越ながら、各章のはじめに4頁を割いて「概略」を書かせていただきました。先生の経験、観察、分析がよりストレートに、ヴィヴィッドに読者に伝わるようにという思いを込めて綴りました。
先生は「私の研究方法は、人と知り合い、付き合い、友だちになることを通じて、そこから何かを引き出すこと」と言います。実際、私もそれこそが先生にとっての「核心的研究方法」だと認識しています。
一方、私自身は、本書の作成を通じて、先生がこれまで米国人として日本や中国を研究対象に、そこで暮らす人々と向き合う過程で蓄積してきた数々の物語が、そのまま我たちの日本、中国、米国、そしてこの三カ国が照らし出す関係性やインパクトを観察し、研究するための「生きた素材」になると、このロングインタビューを通じて実感しました。読者の皆様にとって、本書がそういう類のものになることを祈っております。

2019年8月20日
香港大学の自室にて